- さかのぼるほど手がかりは減る
- たどれるもの、たどれないもの
- 期間が長いと、条文の話はどうなるか
- 今日から先の記録が効いてくる
- 相談の前に整理しておくこと
日付を見て、手が止まった。最近のことだと思っていたのに、ずいぶん前からだったらしい。そういう気づき方をすることがあります。
さかのぼるほど手がかりは減る
期間が長いと分かると、まず「いつからなのか」をはっきりさせたくなります。何年も気づかなかった自分が信じられない、という気持ちも出てきます。
ただ、ここで先に言っておきたいことがあります。
「いつから」は、最後まで分からないことのほうが多いです。
分かるのは、いつからの記録がこちらの手元に残っているか、という範囲です。
始まりの日を特定できなくても、確かめる作業そのものは進みます。始点探しに時間をかけると、そのあいだ今の記録が止まってしまうほうが痛いところです。
しずく相談で多いのは、過去をさかのぼろうとして何週間も過ぎてしまい、その間の外出が一日も残っていないというケースです。
たどれるもの、たどれないもの
過去をさかのぼるとき、材料には向き不向きがあります。
- クレジットカードや電子マネーの利用明細
- 通帳の入出金と、家計簿の記録
- 車の整備や車検の記録に残る走行距離
- 共有のカレンダー、家族で撮った写真の日付
- すでに消えてしまったやりとり
- 何年も前の外出について言われた理由
- 自分の記憶だけに残っている出来事
明細類が強いのは、こちらの記憶と関係なく日付が残っているからです。ただし、さかのぼって見られる期間はサービスごとに決まっています。何年も前までは表示されないことも多いので、今の時点で見られるところまでを画面ごと保存しておいてください。見方は浮気は家計の支出に表れるに書きました。
記憶だけの出来事は、書き留めた時点で記録になります。ただ、後から思い出して書いたものは、日付が曖昧になりがちです。思い出した日付と、思い出した内容を分けて書いておくと、自分でも読み返しやすくなります。
たとえば、こんな形です。
- 10月15日に思い出したこと。たぶん去年の春ごろ、土曜に「同僚の送別会」と言って出かけ、日付が変わってから帰ってきた
- 同じ日に思い出したこと。夏ごろから、スマホを洗面所まで持っていくようになった
書いた日は確かでも、出来事の日付は「ごろ」のままで構いません。あとで明細やカレンダーと突き合わせて、日付が分かったところだけ書き足していけば足ります。
しずく「たぶん去年の春ごろ」と書くのは構いません。あいまいなまま書いておくほうが、無理に日付を決めてしまうより後で使えます。
期間が長いと、条文の話はどうなるか
長かったと分かった人がいちばん気にするのは、もう遅いのではないか、という点だと思います。
民法第724条は、不法行為による損害賠償の請求権について、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間、不法行為の時から20年間、と定めています。起算点は、浮気があった時点ではなく、知った時です。
つまり、何年も前から続いていたという事実だけで、直ちに何も言えなくなるとは条文からは読めません。とはいえ、何をもって「知った時」とするかは、事案によって変わってきます。
慰謝料の根拠になる民法第709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う、と定めるだけで、条文に「不貞」という語は出てきません。不貞行為がこの不法行為にあたるという整理は、条文の文言ではなく、解釈と裁判例の積み重ねによるものです。
- 何をもって「知った時」とするか
- 期間の長さが金額にどう影響するか
- どの程度の記録があれば足りるとされるか
長く続いていたほうが有利になる、という説明を見かけることがありますが、条文にその定めはありません。ここから先を具体的に決めるなら、弁護士に相談してください。時効の数え方は不貞の慰謝料に時効はあるに整理しました。
今日から先の記録が効いてくる
過去は取り戻せませんが、今日から先の記録は、今日から積めます。
裁判で使えるのは繰り返しが読み取れる記録だとされていて、一度きりの写真では足りないとも言われます。これは条文ではなく実務の話ですが、長く続いている関係なら、その繰り返しはこれからも続いている可能性が高いことになります。
数年分をさかのぼるより、これからの数週間を残すほうが早いです。
長く続いているものは、今も続いています。
外出の日付と曜日、出発と帰宅の時刻、言われた理由。この3つを並べていくだけで、偏りが見えてきます。書き方は浮気の記録の取り方にまとめました。
気をつけたいのは、期間が長いと分かったことで、気持ちのほうが急いでしまう点です。急いだぶんだけ、端末を無断で見る、持ち物に位置情報の機器を付けるといった手が近づいてきます。どちらも一度やってしまうと元に戻せませんし、警戒されれば、これから積むはずだった記録のほうが取れなくなります。
相談の前に整理しておくこと
誰かに相談する段階に進むなら、先に次のあたりを書き出しておいてください。
- 長く続いていたらしいと考えた根拠と、それに気づいた日付
- 手元に残っている明細や記録が、いつまでさかのぼれるか
- 外出の曜日と時間帯に偏りがあるか
- 確かめた後に、自分がどうしたいか
気づいた日付を書いておくのは、時効の起算点の話につながるからです。あとから「いつ知りましたか」と聞かれたときに、手元のメモがあるだけで答えやすくなります。
問い合わせのあとには、電話で状況を聞かれます。出られない時間帯があるなら、フォームの備考欄に先に書いておくと行き違いが減ります。
どこに相談すればいいか分からないとき
探偵社そのものではなく、話を聞いたうえで条件に合う事務所を案内してくれる窓口があります。相談だけで終わっても構いません。ただし、問い合わせのあとに電話で状況を聞かれます。出られない時間帯があるなら、フォームの備考欄に先に書いておいてください。
何年も気づかなかったことを、責める材料にしないでください。日々の生活を普通に送っていれば気づかないようにできているもので、気づいた今からできることは残っています。まずは今週の外出を、一行でいいので書き留めるところから始めてみてください。
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