- ひとくくりに違法とは言えない
- 条文が定めている要件
- 分かれ目は電気通信回線を通じたかどうか
- 該当しない場合でも残る問題
- 位置情報の機器を取り付ける行為
証拠を集めたいと考えたとき、最初に思いつくのが相手のスマホです。この行為について「不正アクセス禁止法違反になる」という説明をよく見かけますが、条文を読むと成立する範囲は限られています。
正確に知っておいたほうがよい理由があります。違法かどうかを曖昧なまま進めると、自分が責任を問われる側に回る可能性があるからです。
条文が定めている要件
不正アクセス行為の禁止等に関する法律の第2条は、用語を次のように定義しています。
特定電子計算機とは、電気通信回線に接続している電子計算機のこと。
特定利用とは、その利用のうち当該電気通信回線を通じて行うものに限るとされています。
そのうえで第2条第4項が「不正アクセス行為」を3つの類型に分けていますが、そのいずれにも「電気通信回線を通じて」という文言が入っています。
第1号は、アクセス制御機能を持つ特定電子計算機に、電気通信回線を通じて他人の識別符号を入力し、制限されている利用をできる状態にさせる行為、という構造になっています。識別符号とは、IDやパスワードのことです。
分かれ目は電気通信回線を通じたかどうか
この構造を踏まえると、同じ「相手のスマホを見る」でも扱いが変わります。
- 相手のIDとパスワードを使い、別の端末からSNSやメール、クラウドサービスに無断でログインする
→ 電気通信回線を通じて他人の識別符号を入力しているため、条文の要件に当てはまり得ます
- 手元にある相手の端末のロックを解除し、端末内を直接見る
→ 電気通信回線を通じた利用にあたらないため、条文上はこの法律の対象外と解されます
罰則は第11条に定められており、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
多くの解説が両方をまとめて違法としていますが、法律の条文はこのように分かれています。
該当しない場合でも残る問題
ここで注意が必要です。不正アクセス禁止法の対象外であることと、法的に問題がないことは同じではありません。
端末を無断で見る行為は、プライバシーの侵害として民事上の責任を問われる余地が残ります。夫婦であっても、この点が当然に消えるわけではありません。
また、そうして得たものを目的のために使えるかどうかは、また別の判断になります。
位置情報の機器を取り付ける行為
もうひとつ、自分で調べようとするときに出てくるのが、位置情報を記録する機器です。
ストーカー行為等の規制等に関する法律の第2条第3項が「位置情報無承諾取得等」を定めており、次の行為が規制の対象として挙げられています。
- 承諾を得ないで、相手が所持する装置の位置情報を取得すること
- 承諾を得ないで、相手が所持する物にそうした装置を取り付けること
位置情報を見ていなくても、取り付けた時点で条文の対象になり得る構造になっています。現行の条文には、GPS機器だけでなく、持ち物の紛失防止に使われるタグも含まれています。
ただし同項は「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」という要件を置いています。どのような場合にこれを満たすかは、条文の文言だけでは一義的に決まりません。そのため、必ず違法になると言い切ることもできません。
言えるのは、自分で判断して進めるには不確実な領域だということです。
調べたい気持ちが強いときほど危ない
疑いが強まるほど、確かめる手段を探したくなります。そのときに、法律の線引きを曖昧なまま越えてしまうと、状況が逆転することがあります。
証拠を集めるはずが、自分の行為を問われる立場になる。相手に気づかれて警戒され、その後は何も分からなくなる。どちらも取り返しがつきません。
線の内側でできることは、思っているより多くあります。行動の記録を残す、規則性を確かめる、支出の説明がつくかを見る。まずはそこから始めて、その先が必要になった段階で専門家に相談するという順序が、結果として近道になります。
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(e-Gov法令検索)
- ストーカー行為等の規制等に関する法律(e-Gov法令検索)